筆文字アーティストが相田みつをを解説
高校生からお年寄りまで人気の書家「相田みつを」の作品を筆文字アーティストが解説してみました。作家目線で「ここがすごい!」「ここをみて!」ポイントをぜひお楽しみください。
筆文字は、想いを表せる
筆文字の魅力は、「温かさ」です。鉛筆やボールペン・サインペンでは表現でいない、個性を出すことができます。
そして筆文字は誰でも一度は触れたことがあるはずです。学校の授業で書道があったり、私たちの生活の中には筆文字が溢れています。
最も知られているのは、【相田みつを】さんですよね。
相田みつをさんの名言には、優しさがあります。
「毎日毎日の足跡が、おのずから人生の答えを出す、きれいな足跡には、きれいな水がたまる」
人生観や日々の中にある、優しい気持ちだったり、気付かない幸せを謳った作品が多くあります。書の詩人、命の詩人とも称される相田みつを(1924〜1991)。
今回の作品は
基本的に前向きな作品が多いですが、中でもこの作品は印象的です。
この作品を見たときにどのような印象を持ちましたか?
注目すべき3つのこと
①全てひらがなで書かれた作品
注目すべきは全てがひらがなで書かれていること。パッと見でわかりやすい作品ですが、「こころ」という文字に注目していきましょう。比較的丸い文字が多いですが、どこか笑顔に見える文字。
優しさを丸さで表現する書家は多いですが、ここまで印象を与える人は少ないでしょう。
②かすれが感情のあらわれ
書家や筆文字アーティストの作品でよく擦れ文字を見ると思いますが、相田みつをさんはこの擦れを巧みに使っています。最後の「きめる」を見てみると、力強さが伝わるほどの擦れ文字。
《決める》と《決意》を表現した素晴らしい文字です。筆圧を強くすると文字は擦れますので、この最後の2文字で全てが伝わる作品になったと思います。
③計算された作品バランス
作品の中心部分にある文字は「こころ」です。ポエム作品において全体的なバランスを気にする作家さんは少ないです。特にこの作品は、ポエム作品でありながらイラストのように中心部分に、メインテーマを書いています。
一瞬で「こころ」が目に入り、今の自身の心情と照らし合わせられるような作品。もし今不安になっている人、自信に満ち溢れている人、いろんな心情によって作品のメッセージが変わってくるということです。
想いを表現した筆文字作品
これはinstagramのフォロワーさん23歳女性の方からのご依頼の話です。このご依頼は少しショッキングな内容ですので、どうぞご注意の上ご覧ください。
6年間におけるDV
そして自由に
ご依頼内容は、いまの自分が嫌いで、でも明日の自分も怖い。とにかく過去を捨てたい。この作品は、一人の人生を大きく変える作品となりました。生まれ変わることは、なかなかできないです。でも誰でも未来は見れるし創ることができるんです。いまのわたしではなく明日のわたしと会える幸せを目一杯浴びてほしい。
一つの作品が一つの命、人生を変えたこと心から幸せに思います。
この作品のポイントは
過去・現在を捨てて、一秒先の未来へ向かいたい女性の想いを《滲んだ文字》で表現しました。
滲んだ文字は
『涙』と『洗う』を意味します。この作品では、力強い擦れ文字は一切使わずに水気を含んだ文字のみを採用しています。
前向きになれるように作品中心部分に「いま」を配置しており、パッと見た時に今の気持ちを大切にしてほしいと思っております。